みちくさの達人
滞在3時間、半日、何度でも! アイヌ文化を体感する「ウポポイ」の巡り方

写真はイメージです©️(公財)アイヌ民族文化財団

北海道・ポロト湖畔に2020年7月に誕生した「ウポポイ(民族共生象徴空間)」。アイヌをテーマとした国立施設で、広大な敷地に博物館や体験スポット、伝統芸能の体験交流ホールなどが点在します。どこから見学しましょうか? ウポポイのスタッフに「3時間から半日ほどで巡るコース」をアドバイスしてもらいました。

界 ポロトに隣接する「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、アイヌ文化に触れられるフィールドミュージアムです。JR室蘭本線白老(しらおい)駅から歩いて10分ほど。ポロト湖南岸の自然豊かな地に博物館エリアと公園エリアが広がり、敷地は東京ドームおよそ2個分。ウポポイはアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」の意味です。

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

エントランスへ続く「いざないの回廊」では、北海道で出合える動植物の影絵模様やアイヌ民族の伝統楽器・ムックリなどの音楽で来場者を迎えます。キツネ、エゾシカ、丹頂鶴、ヒグマをはじめその数は約80種。自然と共に暮らしてきたアイヌ民族を感じさせるアプローチです。

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

事前予約のチケットを手にしたらゲートへ。正面には国立アイヌ民族博物館が建ち、壁面には伝統的なアイヌの家屋(チセ)に見られる「三脚(ケトゥンニ)構造」をモチーフにしたロゴマークが施されています。収蔵資料は約1万点を誇り、2か月に1回ほどのペースで展示替えが行われています。

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

左手には、体験交流ホール(ウエカリ チセ=人の集まる家)や体験学習館(ヤイハノッカラ チセ=自分で学ぶ家)があり、博物館奥には工房(イカラ ウシ=物作りをするところ)や伝統的コタン(テエタ カネ アン コタン=昔の村)が湖に沿って点在します。パンフレットや案内にはアイヌ語表記があり、知るほどに興味が高まります。

さて、どこから見学しましょう?

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

ウポポイの広報・羽山 亮太さんに、3時間から半日ほどでめぐる定番コースを教えていただきました。その内訳は博物館1時間、体験交流ホール・伝統芸能鑑賞30分、伝統的コタン1時間、飲食や土産選び30分。3時間では少々急ぎ足かもしれません。

「ウポポイは“アイヌ文化を五感で感じる”がテーマです。どう巡るのもオススメで、例えば(アイヌの)食に興味がある方は食事処を、体験がお好きな方は体験三昧、歴史や文化を学びたい方は博物館へ」と羽山さん。「ウポポイは公園でもありますので、広場でのんびり過ごす方も多いです」ともアドバイス。

では、めぐっていきましょう!

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

まずは、体験交流ホールへ。伝統芸能の上演時間を調べて、先に希望回のチケット(無料、入場料に含む)をとるのがポイント。その時間が決まると、前後に博物館見学や食事などがスムーズです。今回は体験交流ホールの「伝統芸能上演・シノッ〜アイヌの歌・踊り・語り〜」(約20分)から見学をスタート。

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

演者はみなウポポイの職員でありアイヌ文化伝承者とのこと。最新の映像技術や北海道の美しい映像を取り入れた演出により、アイヌ民族の世界を表現しています。舞踏担当者から、読者にこんなメッセージをいただきました。

「アイヌ民族の伝統芸能は、儀礼やお祭りに集まった人々が、カムイ(神=人間を取り巻く全てのもの)と一緒に楽しむために演じられてきたと言われています。また、伝承されたものに節回しや動きなど、その時々の気持ちで即興的に変化させることもあります。アイヌ文化の多様性が感じられます。」

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

次は、国立アイヌ民族博物館です。建物は高床を模した斬新なコンクリート造りで、1階はシアターやライブラリー、ミュージアムショップがあります。2階はポロト湖を一望するパノラミックロビー、そして展示室になっています。

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

展示室は、大きく6つのテーマで紹介。「イタク(私たちのことば)」「イノミ(私たちの世界)」「ウレシパ(私たちのくらし)」「ウパシクマ(私たちの歴史)」「ネプキ(私たちのしごと)」「ウコアプカシ(私たちの交流)」。順路はなく、それは「興味を持ったことから自由に見学してください」との意向から。

「イノミ(私たちの世界)」では、アニメーションで「アイヌ(人間)とカムイ(神=人間を取り巻く全てのもの)」の互恵関係を分かりやすく説明。また儀礼に使われる道具(イクパスイ、イナウ他)の展示などを通じて、アイヌ民族の世界観の中心となるカムイの考え方、自然観、死生観などを紹介します。

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

「ウレシパ(私たちのくらし)」では、衣食住などを中心に紹介。独特の柄が印象的なアイヌ民族の木綿衣には、地域によって文様や色をはじめ、作り方に違いがあることが分かります。首にかける玉飾り・タマサイや飾り板を持つシトキの展示もあり、これは儀式で正装する女性が身につけるものです。

羽山さんは「アイヌ語にはいくつもの方言差があります。それだけ地域に特色があり、生活様式が異なり、多様性を感じることにつながります」と話します。

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

今度は、「伝統的コタン」へ。コタンとは集落のこと。白老地方に伝わるアイヌ民族の家屋(チセ)が再現されていて、暮らしの中に伝わるアイヌ民族の歌や踊り、物語などを囲炉裏の間で披露します。時間があれば「工房」で民工芸品の実演見学や、木彫りや刺繍体験などもぜひ。

©️(公財)アイヌ民族文化財団 ©️(公財)アイヌ民族文化財団

飲食店のおすすめは、気軽にアイヌ料理が味わえる「カフェリムセ」やフードコート「ヒンナヒンナキッチン 炎」、コース料理が自慢の「ハルランナ」などがあります。寒くて厳しい北海道の冬を乗り越えるために工夫された伝統料理をご賞味ください。

ちなみに写真は、私がミュージアムショップで買い求めたウポポイ土産です。

ウポポイの巡り方、いかがでしたか?

ウポポイを体感すると、界 ポロトの滞在が深まります。例えば、シンボルのとんがり湯小屋は「三脚(ケトゥンニ)構造」、客室は伝統的なチセの中心にあった四角い炉から着想するなど、気づいて嬉しいこだわりがいっぱいです。

ウポポイの年間パスポートで既に数十回も通う、界 ポロトのスタッフ・藤野真司さんに魅力を伺いました。「アイヌ文化は知るほどに、“五感で感じる”大切さを学びます。理性でなく感じること。同時に、厳しい自然で暮らすための考え方には、合理的な理由があると気づきます。アイヌ文化の継承者から『理解より知ることが大事』とも教わりました。ウポポイでぜひ体感を」とのこと。

(公団)アイヌ民俗文化財団 (公団)アイヌ民俗文化財団

みなさまもぜひ、界 ポロト滞在にあわせて「ウポポイ」へ。滞在3時間、半日と言わず、何度でも! ウポポイスタッフ一押しの絶景時間は夕日の頃だそう。10月末まで、土日祝日は夜20時まで開園しています。

最後に、私が特に感動した言葉をご紹介します。「民族共生象徴空間」はアイヌ語で「ウアイヌコロ コタン」ですが、これは「互いを敬う集落」の意味があるそうです。ウポポイで教わる「多様性、お互いを尊重すること」。正しく知ることで相手への興味や尊敬の思いが生まれる気がしました。

  • https://ainu-upopoy.jp
  • 北海道白老郡白老町若草町2-3 MAP
  • JR白老駅(北口)から徒歩約10分
  • 〜2022年10月31日:平日9時〜18時、土日祝9時〜20時、
    2022年11月1日〜2023年3月31日:9時〜17時
  • 月曜(祝日の場合は翌日以降の平日休み)、年末年始
  • 大人1200円、高校生600円、中学生以下無料(年間パスポートは大人2000円)。
  • 0144-82-3914
  • 有料
  • ※ウポポイ入場は前日までの事前予約制
※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。