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ツリーハウスクリエイター 小林崇 × 星野リゾート 星野佳路

夢はツリーハウス・リゾート

旅の中にある非日常は、人間が原点に戻る体験でもあります。
そんな体験ができるのが、ツリーハウス。
今回はツリーハウス創作の第一人者である
ツリーハウスクリエイター・小林崇さんをゲストに迎え、
樹齢300年、地上から22.5mの高さの樹上で対談が実現しました。

小林崇

1957年静岡県生まれ。ツリーハウスクリエーター。 スタイルとデザイン、感性をコンセプトにしたツリーハウスを創作する日本のツリーハウス第一人者。1994 年、ツリーハウス建築の世界的権威ピーター・ネルソンに出会い、 毎年オレゴン州で開催されるツリーハウスの国際イベント「WTC(World Treehouse Conference)」に日本から唯一参加するようになる。世界中のツリーハウスビルダーや樹木医と交流しながら、最先端の技術やデザイン、樹木学等を学び、ツリーハウス情報を共有している。2000年、ジャパン・ツリーハウス・ネットワークを立ち上げ、2005年には有限会社ツリーハウス・クリエーションを設立。 沖縄から北海道まで、各地の風土・樹木に適したツリーハウスの制作にあたっている

TREEHOUSE PEOPLE 公式サイト

「森を残したまま、何か面白いことを」
が発想の原点。

星野

まず、「リゾナーレ 熱海」の運営を任された時に、敷地内に広大な森があることを知り驚いたんですよね。ただ広いだけじゃなくて、巨木が多い。こんなに大きな木がある森って、なかなかないんですよ。どうにかこの森を活用したいと、以前から欲しいと思っていたツリーハウスの建設を思いつきました。そこで日本でツリーハウスを作るとしたら小林さんしかいないと、お願いしたんです。

小林

ありがとうございます。僕もまず現地に来てみて、とにかく木が大きいこに手応えを感じました。どういう木に巡り会えるかというのは運ですから。400年くらい生きているご神木のようなクスノキがたくさん自生していて、これはやるしかないなと思いました。

星野

軽井沢の星野の地に隣接して「国設野鳥の森」と呼ばれる森があるんです。「日本野鳥の会」を創設した中西悟堂という人がいまして、昭和初期に彼が軽井沢に来た時、僕の祖父やその仲間に「これからは、野鳥は食べるものではなくて、鑑賞するものになるだろう」と言ったんです。祖父は驚嘆したらしいんですが「野鳥の楽園」という形で森を活用しました。そして確かに野鳥は鑑賞するものになりました。ただし全然儲からなくて(笑)。でもできるだけ、開発費を使わずに、森を残したまま何か面白いことができないか、というのがそもそもの星野リゾートの発想の原点でもあるんですよ。

小林

放置されて荒廃しかかっている森は日本中にたくさんあるんです。日本でも宿泊できるツリーハウスを作ることができれば、森を再利用して、子供達を自然環境になじませる環境も作ることができます。2020年にオリンピックがありますから、それまでになんとか足がかりを作りたいです。

星野

今回は一つしか作れませんでしたが、法環境が整えば、あちらこちらの森にツリーハウスが作れるかもしれない。是非一緒に取り組んでいきたいです。実は今回もツリーハウスだけのリゾートを作ることを視野に入れて、今までにない試みを小林さんと沢山しましたよね。

小林

作業時間の4割くらいは、調査でした。たとえば今回、一流の構造設計会社に入ってもらい、初めて木の耐震計算をしたんですよ。高層ビルの耐震計算と同じように、木がどれだけ振動に耐えられるか計ってみたんです。調査結果から得られた収穫は大きかったです。安全確保のため、そしてその安全を行政組織に認めてもらうために、どんな工夫をすればよいかが明確にわかりました。

今回「NEST」(巣)を作ることを目標にしようとしていますが、今はまだ木が十分に成長していなくて、覆いきれていないんですよ。木は他の生物と違って、死ぬ日まで成長し続けますから。もしこちらの思った通り成長していないのならば、木の成長の方向に合わせて、ツリーハウスの構造を調整する必要も出てきます。むしろその作業の方が、作る作業よりも重要なんです。 NEST(巣)化の第一段階の調整は6月には完成する予定です。

プリミティブな感覚に戻る気持ちよさ

星野

このツリーハウスは、完成した直後から、すごく人気が出たんですよ。ここにいる気持ちの良さというのは、人間本来がもつプリミティブ(原始的)な感覚からくるものなのかもしれませんね。

小林

そうだと思います。地上に降りてくる前のDNAが人間に残っていると僕は思うんです。ツリーハウスに登ったときの、言葉にできないハイになる感じは、そういう根源的なもののような気がします。 また、ツリーハウスはしっかりと自分の足場を確認しないと登ることができません。エレベーターやエスカレーターがあって楽に移動することが出来るような環境で生活している僕たちからすれば、そういった経験はとても新鮮で貴重です。 理屈抜きに僕らの五感を刺激してくれる。自分がいる場所の匂いや感触、空気をとても敏感に感じることができる場所、という意味で言えば、ツリーハウスは日本の茶室に近いものがあると思います。

星野

こうやってツリーハウスの中にいると、小林さんが今おっしゃったことにとても共感できます。実際、茶室のようにコンパクトな空間でもありますし、風の音が聞こえたり、木の匂いを感じられたりする。それから、空中に浮いた場所で暮らすようなこの感覚ですよね。

小林

国が発展して、僕たちはビルに住むようになりましたけど、その発展も行き着く所まで行くと、やっぱり先祖帰りを始めるのかなという気がします。ここで夜を過ごせることができれば、もっと素晴らしい体験ができると思いますね。あるいは、ミーティングとかに使っても良いと思います。

星野

たしかに、会議室でやるのとは、また違った考えが浮かびそうな気がします。ひょっとしたら、こんな案件つまんないからやめようなんて言い出すかもしれない(笑)。

小林

木が沢山ある地方であれば、公民館として活用してもいいと思うんですよね。そうやって地方で少しずつ活用事例を作っていくことができれば、行政も地方レベルから、段々と変えられるかもしれない。

アイデアで勝負することが価値をもつ時代

星野

小林さんは今おいくつですか。

小林

56です。

星野

僕と大体同世代ですね。僕は、小林さんご自身が持っておられるツリーハウス作りの技術を、次の世代に伝えて行ってほしいと思っているんですよ。学会というか、そういうことを教える場があれば、と思います。

小林

それは考えています。どこか、国有林でも県有林でも借りて、そこで実習することができるような場所が作れれば、僕だけじゃなく、色んな人の知恵も集まると思うんですよね。日本は地震が多いこともあって、耐震技術に関して優秀なエンジニアがたくさんいますから、彼らの知恵も借りることができる。あるいは、ツーリズムの方やNPOの方々の知恵もそうです。そういった人達を巻き込んで、ツリーハウス作りの文化を盛り上げていくことができればいいなと思っています。ツリーハウス作りの講座自体は4年前くらいからNPOで行っていて、もう100人くらい卒業生がいるんですが、それはあくまで基礎を教えるだけなので、卒業した後、彼らの行き先はまだないんですよ。プロを養成するカリキュラムはできていませんし、そのための場所もできていません。やらなきゃいけないとは思っているんですけど、僕だけの力ではとても無理ですね。

星野

日本では小林さんだけが、飛び抜けて技術を持っている状況ですからね...。なんとか、その技術を継承して、次の世代につなげていかなくてはいけませんね。次の10年が勝負なんじゃないかと思っています。

小林

その通りだと思います。実は、10年後、65歳の自分が何をしているか、まだちょっと想像がつかないんですよ。今と同じように、木に登って作業をしているのかどうか。正直、身体の衰えは感じます。ひょっとしたら、自分のプライベートなツリーハウスの中で、アートブックを作っているのかもしれません。

星野

小林さんはパイオニアですから。さっきの野鳥の話もそうですが、パイオニアが予言すると最初はビックリされるんだけど、後の世ではその予言が実現されていくんですよね。

小林

僕、日本では、一番最初にツリーハウスを創り始めたので、色々と引きずっているんですよね。法律との兼ね合いとか、地方とか、森とか、グローバル化して、画一化していく社会の中でのマイノリティの考え方とか...。日本には素敵な森がいっぱいあるのに、なかなか有効に使われていないんです。そういった場所を、環境や生態系を破壊したり、大規模な資本を投入するのではない形で再利用したいものです。

星野

今は、アイデアで勝負することそれ自体が価値を持つ時代ですよね。

小林

ツリーハウスを作る活動を通して、僕が一番伝えたいことはそこなんです。森や田舎をデザインするという考え方。けれど、そういう話がわかる人はなかなかいないです。

ツリーハウス・リゾートを作るなら瀬戸内海!?

星野

僕はいつか、森じゅうにツリーハウスだけがあるリゾートを作ってみたいんですよ。泊まれるのはもちろん、レストランなどの施設もツリーハウスになっていて、各施設が全て吊り橋で繋がっているような。日本だと、どういう場所が適していると思いますか?

小林

瀬戸内海だと思います。日本中でツリーハウスを作ってきましたが、気候的に作るのが大変な場所も結構ありました。南側、特に太平洋側は風が強いですし、北の方だと降雪がある。両方ないのが、瀬戸内海なんです。ツリーハウスを数多く作るなら、瀬戸内海の島に特区を作るのが一番現実的かなあとずっと前から思っていました。木もたくさんありますし。

対談の後、ツリーハウスの横に作られた樹上アスレチック「森の空中散歩」に挑戦する小林さんと星野。地上9メートルの高さに少し腰が引けてましたが、無事全長84.7mのアスレチックをオールクリアしました。

星野

なるほど。3年ください。ちょっと場所を探してきます。 リゾナーレ・オン・ザ・ツリーを作りましょう。

小林

わかりました。3年は持ちこたえます(笑)。実際問題、そこまで非現実的な案でもないと思うんですよ。ツリーハウスとは言え、そんなに高い場所に作らなくてもいいんです。地面から1メートル離してやるだけでも全然普通の家とは変わりますから。

星野

それに、高低差があってもいいですよね。

小林

子供達が集まるような場所は低いところに作って、カフェは高い場所に作るとか。

星野

「リゾナーレ 熱海」ではツリーハウスをもとにアウトドアのプログラムをご用意しているんですが、みなさんが楽しんでくださっている反応は我々の予想を越えていますね。 今後の10年はキーポイントになりそうですね。小林さんにとっても、日本のツリーハウスにとっても。

小林

そうですね。ツリーハウスのような、ちょっと得体の知れないものをこの国が受け入れることができれば、世界からの目線はかなり変わるような気もします。

星野

同感です。

小林

ツリーハウスって本来なくてもいい、必ずしも生活に必要ではないものなんです。でも、そういうものに対して一生懸命取り組むこと自体が受け入れられる国というのは、とても豊かなのではないでしょうか。そういった文化を次世代に引き継ぐ役目を僕は担っているのかなと今は感じています。

星野

次世代に道を指し示して、その歩き方を教えてあげるのが、私たちの世代の責任ですよね。ぜひ、瀬戸内海にツリーハウス・リゾートを作りましょう。今日で覚悟が決まった気がします(笑)。

構成: 森 綾 撮影: 萩庭桂太

今回の対談場所は

星野リゾート 6HEJkWR1zijwiB3XwQE9eHjDBJmAリゾナーレ 熱海に2014年3月に誕生した「森の空中基地 くすくす」で開催。小林崇さんも惚れこんだ樹齢350年の巨大なクスノキをホストツリーにしたツリーハウスと森のアスレッチックでは朝から夜までさまざまなアクティビティを提供しています。

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