※この鼎談は2020年5月7日に、オンラインで行われました

Vol.1観光産業から見た
新型コロナウイルスからの出口戦略とは?

星野:
和田さん、ヨッピーさん、今日はお時間いただきありがとうございます。楽しみに参りました。全員が初対面なので、まずお二人に軽く自己紹介いただいて。そうですね、今日はヨッピーさんに話をリードしていただこうかな。
ヨッピー:
わかりました。僭越ながらよろしくお願いします!ではまずは和田先生、自己紹介をお願いします。
和田:
国際医療福祉大学大学院で公衆衛生学の教授をしております、和田耕治です。

私は旅行が大好きで、星野リゾートのリゾナーレなどは何度もいったことがあります。今日は新型コロナウイルスの感染対策に知恵を絞りながら、好きな旅行を続けられるためにはどうしたらいいのか、皆さんと考えたいと思っています。

ヨッピー:
ありがとうございます。僕はヨッピーと申します。「お出かけ体験型メディア SPOT」という、ライターが現地に行って、その場所の魅力を記事にするメディアを運営しています。ただ、今は新型コロナウイルスの影響で、現地に取材に行くこともできなくて。おでかけ記事は休止して、家の中で楽しむ方法やお取り寄せ情報など、できる範囲内でメディア運営を続けております。
 
星野リゾートには、この新型コロナウイルスの前と後で、どんな影響が出ていますか?

星野:
緊急事態宣言の前までは、大きな影響はなく、お客様にお越しいただくことができていたんです。ところが4月の緊急事態宣言が出た途端に「旅行しないでください」というメッセージが広まり始め、また受け入れる側の自治体も医療体制の破綻を考えて、旅行者をウェルカムしなくなりました。

ここからの落ち込みが激しかったですね。旅行者も90%以上減ったと思います。それが5月も続いています。
ヨッピー:
9割減!めちゃめちゃ厳しい状況ですね。和田先生の近況はいかがでしょうか? 大変忙しくされていると思うんですが……。
和田:
私は今、政府の専門家会議も出させていただいているので、対策を日々考えています。

感染リスクが高いウイルスと観光産業、
折り合いは見つけられるのか?

ヨッピー:
なるほど。和田先生、まずこのウイルスの特徴を教えていただけますか。
和田:
はい。まず、このウイルスが今までのインフルエンザと違って厄介な点は、みんなが免疫を持っていないということなんです。感染者がいた場合、周りの人たちまで比較的簡単に広がってしまいます。

またワクチンも通常はできるまで最低でも1年半程度かかりますし、それも確実ではない。つまり約8割の人が抗体を持つ状態になるまで、中長期に感染流行の波が続く可能性が高いのです。
ヨッピー:
そうすると、大多数が抗体を持つまで観光産業を含め、社会の経済や活動も元通りにならないなんてこともありえるのでしょうか。
和田:
すぐに元通りは難しいかもしれません。ですが、対策として感染リスクが高い場所を自粛いただいたり、ある程度の個人情報を提供いただき感染のリスクが高い場合にはアラートを出したりすることで感染拡大の対策ができることがわかっています。そうした対策をすることで世の中の8割程度の経済を回せることが徐々にわかってきました。実際に中国、韓国、台湾あたりで、そういうことができつつあります。
ヨッピー:
そういった、いわゆる第一波後の地域の観光産業の現状どうなっているんでしょうね。
星野:
台湾でいえば、台中の温泉地で運営しているリゾート「星のやグーグァン」は好調ですよ。台湾は感染防止策を打つことで、たしか2週間ほど連続で感染者がゼロになった期間がありまして。そして何が起こったかというと、もともと台湾の方たちは海外旅行志向だったのが、外国にいけないので、島内での旅行が劇的に増加しているんです。

台北から車で2時間半の渓谷に建つ「星のやグーグァン」台北から車で2時間半の渓谷に建つ「星のやグーグァン」

ヨッピー:
へえ~! なるほど。なるほど。確かに、日本でも海外旅行好きだった人が「海外行けないから国内で遊ぶか」って回帰する流れはあるでしょうね。
和田:
台湾ではすでにそうした動きがあるのですね。とはいえ、このウイルスはなかなかしたたかで、ちょっと対策を緩めるだけで感染者が増える恐れがあります。今回の東京のように感染者が増えてきますと、すぐに病床がいっぱいになり、交通事故やガンなどの方でこれまでは助けられたはずの命が助けられなくなる医療崩壊がおこります。

対策がうまくいった国の事例を参考にして、可能な限り感染のリスクを抑えながら、経済を回していく出口戦略をどのように持つか。今、そこが課題ですね。

中長期化する新型コロナウイルス流行の出口は
生活様式の新しいスタンダードにある

ヨッピー:
感染の抑制と社会の経済活動を両立する出口戦略が必要とされているということですね。今のところ、戦略はあるのでしょうか。
和田:
一応、方向性として2つの軸があると私は考えています。1つは社会的な要請のあるところから開けていくこと。もう1つは感染リスクの低いところから徐々に開けていくことです。

ここが観光産業にも関わってくるところかと思いますが、集まって食事をしたりお酒を飲んだりする場所はどうしても感染拡大のリスクが高いんですね。人が集まる締め切った空間で複数の人がいる状況は避けていかなければなりません。
星野:
先生のおっしゃるとおり、感染リスクは抑えて、安心してもらえるサービスを宿泊施設は提供しなければなりませんね。あとから詳しくお話しできればと思いますが、星野リゾートでは3密を徹底的に回避する滞在を今、ご用意しています。
和田:
良いですね。人のマインドとしてずっと家にいろといわれても、なかなか気持ちが沈みますので。感染対策をしながらの宿泊施設の運営をぜひ実践していただきたいです。

また旅行をする方は、家族など普段一緒に暮らしている人とプライベートな空間を保ちながら、住んでいる都道府県の中での旅行をするというのは今後の比較的とりやすい選択肢です。

今後の観光産業のありかたについて、次々と和田先生に質問をしていく星野

星野:
そうですね。ここまでの先生のお話しを聞いていて、基本的にこのウイルスは中長期的に無くすことが難しい、と。その場合、社会のあるべきゴールはどのような姿になるんですかね。
 
和田:
結論から言うと、「感染リスクを下げる新しい生活様式を定着させる」ことが手段のひとつです。それにより、感染を最小限にしながら、日常をできるだけおくることがゴールです。新しい生活様式においては次の3つが基本になりあります。

1つ目は人との距離を2メートル、最低でも1メートル空けること。 2つ目は手洗いの習慣化ですね。これは重要なのですが、手を洗うタイミングがけっこう難しくて、おろそかになっていることが多いです。例えば一般の皆さんは、電車に乗って、降りてすぐ手を洗わない人が多い。移動のたびに、すぐ手を洗うことが大事です。

最後3つ目は、マスクの着用です。これに関してはいろんな議論がありましたが、自分の飛沫を飛ばさないためにマスクは必要です。自分好みのおしゃれなマスクを選ぶのもよいのではないでしょうか。
星野:
感染リスクをなるべく回避する生活をしながら、じわじわ免疫を持った人の比率を増やしていくということですね。
和田:
はい。ですので、旅行も今あるスタイルを新しい様式にどう変えていくか。どうしたら感染リスクを下げられるのかということは、ぜひとも観光産業の皆さまに考えて実践していただきたいと思っています。