無料で占ってきた4万8000人
のデータベース。
人間も、人生で起こる問題にも、
「パターン」がある
- 星野:
- 飯田さんは、もともとは占い師だったわけではないですよね。
- 飯田:
- そうですね。もともとはお笑い芸人をやっていたんですが、芸人時代の後半くらいから構成作家の仕事も始めて。とにかく色々な仕事をやってきましたね。いま、何でこんなことになってるのかわからないくらい(笑)。
- 星野:
- 占いは、自分で勉強されたんですか。
- 飯田:
- 占いを教えてくれる学校もありますが、僕は基本的に独学ですね。きっかけは、大学時代に落語研究会に入っていて、話のネタとして占いをかじり始めたんです。もともと占いなんて信じていなくて、今も若干信じていないのですが、とりあえず軽い気持ちで占い師の先生に占ってもらったんです。そしたら「あなたは芸人か占い師が向いている」と言われまして。
- 星野:
- へえ~。
- 飯田:
- まあ、半信半疑でありつつも、割と言われたことが当たるので、面白い世界だなと思っていたんです。
その先生がいつも同じ本を読んで占っていたんですよ。それを見ているうちに、すごいのは先生よりもこの本なんじゃないかと思い始めて(笑)。
- 星野:
- なるほどね。(笑)
- 飯田:
- これさえ手に入れば、俺も占いができるなと思ったんです。で、どこで売ってるかと先生に聞いたら、教えてはくれなかったんです。でも「飯田さんは才能があるから、ほかの本で勉強すればこの本以上のことが占えますよ」と言われたので、そこから本格的に勉強を始めましたね。ありとあらゆる本を読んで、その後は実践あるのみで。これまでに4万8000人くらいは占っていて、来年で5万人くらいにはなると思います。
これまで4万8000人を占ってきた飯田さんのデータベースが詰まったノートのホンの1冊、これが天井を超える程あるという。占いは統計学、人間の性格と悩みの種類のパターンは1万人を超えると、傾向がはっきりしてきたそう
- 星野:
- すべて無償でやっていらっしゃるんですよね。
- 飯田:
- そうです。とにかくデータ量と経験値はかなり稼いでると思います。
- 星野:
- とにかく無償でもいいから数をこなすということですね。
基本的に、飯田さんにとって占いってどういう位置づけなんでしょう。
自分のほかの活動に役立てるためにやっているんですか?
- 飯田:
- うーん、単純に占いは趣味でやってますね。占いが別の仕事につながるとか、そういうことはあまり考えてませんね。占いで、ここまで知名度が上がるとは思っていませんでした。
- 星野:
- 占いで世に出るとは想定していなかったと。
- 飯田:
- はい。ただ単に好きでやってるだけですから。自分から占いでお金を稼ごうと思って行動してるわけではないです。
- 星野:
- ということは、本業と呼べるものはなんなんでしょう?
- 飯田:
- 放送作家や作家業になります。人生相談関係のコラムとか、もちろん占い関連のことも書きますけど。
- 星野:
- ということは、本業にも占いの要素は入ってきてるのですね。
- 飯田:
- そうですね。占いの経験はかなり役立っています。人間の生き方のパターンってそんなに多くないので、解決方法も割と決まっているんですよ。この年齢ではこう動いた方がいいとか。
- 星野:
- 確かに人生でぶつかる問題のパターンは、無限にあるわけではない。
- 飯田:
- そうなんですよ。ある程度の数の相談経験があれば、答えって占いじゃなくても割と見えるんです。だから、どっちかというとアドバイスの内容というよりは、アドバイスをちゃんと生かしてもらう方法を考える方が大変ですね。聞くだけ聞いてやらない人って、とても多いので。
海外だと心理カウンセラーが多かったりするんですが、日本ではその役割を占い師がやっている傾向もありますね。

- 星野:
- 先ほど独学で占いを勉強されたとおっしゃっていましたが、大量の本を読んで勉強されたんですか?
- 飯田:
- 本もたくさん読みましたが、大きかったのは実践ですね。5000人くらいまではみていても、占いはあんまり当たらなかったです。1万人を超えてくると結構当たるようになって、2万人を超えるともう外れない。3万人を超えたときは、100%当ててました。ただ、当てすぎちゃうと、それはそれでまずいんですよ。それで、わざとちょっと外すようにしてるんです。
- 星野:
- へえー。どうしてですか。
- 飯田:
- 10年前は、100%言い当てていたんですが、たまたま心理学の先生と話す機会があって、当てすぎない方がいいと言われたんですね。お客さんがこわがっちゃって、コミュニケーションを取りづらくなってしまうと。ちょっと外した方が、お客さんも安心するんです。
- 星野:
- その的中率っていうのは、やっぱり、データベースが圧倒的であることが大きいんでしょうね。
- 飯田:
- そうですね。僕、占いの結果をノートに記録しているんですが、もうこの部屋の天井につくくらいの数は貯まっていますね。
- 星野:
- それだけデータがあれば、感情的に反応する人にも対応策が考えられるでしょうし。
- 飯田:
- そうですね。反応にしても、大体わかります。例えば、先ほど星野さんにも生年月日を直筆で書いてもらいましたが、その筆跡だったり、その人の身のこなしや服装も細かく見ているので、その時点でどういう人か予想ができるんです。
- 星野:
- 人間のパターンを見分けるということですね。
- 飯田:
- はい。人間を行動パターンごとに振り分けていて、目の前の人が何番に当てはまるかが分かる。で、実際に占ってみて誤差があれば、それを次回修正していく。その繰り返しですね。でも、客商売をやっている人は、みんな同じようなことをやっているはずなんですよ。

- 星野:
- わかります。宿泊客にも、パターンはありますね。
- 飯田:
- 販売員さんと占い師って本当に似ていますよ。みなさん、自分なりの分類法を持っておられると思います。「占」という文字に屋根をつけると、「店」になりますよね。占い師って、全ての商売の原点とも言えるんです。
- 星野:
- なるほど。確かにね。
- 飯田:
- パターンを予測して、次の手を考える。接客にしても、仕入れにしても、なんでもそうですよね。
構成: 森 綾
撮影: 萩庭桂太