Vol.3みんなレビュー病?
自分の好みより
他人の評価で動く人々

星野:
バーチャルからリアルに来たというのが、僕はいいなと思いますね。
加藤:
もうそういう時代でしょう。そういう意味では、旅行というものの持つ価値も上がっていくんじゃないかなあ。
星野:
若者の旅行参加率は減っているんですけどね。20代は車の免許もたない、旅行にいかない。それはなんでだと言われるとまたこれというものがないのです。星野リゾートには「界」という温泉旅館のブランドを持っているのですが、そこでは「若者旅キャンペーン」というのを行っています。20代から温泉を楽しんでもらおうと。会席料理とか、マナーにうるさいんじゃないかとかいう温泉旅館の敷居を低くしています。「リアル温泉旅館」を体験してもらうために。
加藤:
あまりに体験をせずにネットで情報を得て終わりという危機感は、増していくと思っています。情報はあふれてますが、真偽も分からない情報にまみれて、随分雑な情報の仕入れ方をユーザーはしているんだけどそれに慣れてて気づかない。自分もですけど、信憑性も出所もわからない「合コンでモテる10の方法」Web記事を読んでしまったり(笑)。で、妙に信じてる自分がいて(笑)。でもそんな薄っぺらい知識でもてたりしないじゃないですか。随分チープな例を出してしまいましたが。
星野:
とても、わかりやすかった(笑)。

レビュー病は「逆・百聞は一見にしかず」。100の他人の記事を読むより1回の実体験の方が面白くて、残るのにレビュー病は「逆・百聞は一見にしかず」。100の他人の記事を読むより1回の実体験の方が面白くて、残るのに

加藤:
ネットの弊害はいろいろあります。前は前売りでチケットが売れていたんです。でも今は前売りよりもスタートしてその評判を聞いてから、売れていくという現象がでてますね。。これはもう世の中の人が、ネットの評判を知ってからじゃないとお金が払えない病気にかかってるなあ、と。
星野:
旅館もそうですよ。自分の趣味や趣向から決めているんじゃない。会ったこともない不特定多数の人が「行ってよかった」と言ってるから行こう、と。
加藤:
あのレビュー病っていうのは罪深い流れだなと思いますね。
星野:
統計的におかしいことは多いのにね。
加藤:
エンターテイメントも、ゲームも、CDも、全部点数つけられてデジタル化されるけど、そういうことじゃない。「自分だけに合った何か」っていうのを、きちんとお金を使って探していかないと。

時間制限のないゲームは
リアルな人生に
どんどん寄り添っていく。

星野:
加藤さんが次にやりたいことはなんですか。今やってみたい新しい分野、スケールのようなものはありますか。
加藤:
海外はかなり前からやってまして、アメリカは3~4年前から順調に興行できてますね。アジアでもいくつか展開しています。
星野:
なるほど。では、場所展開ではなく、次元、次のステップは考えてらっしゃいますか。
加藤:
いろんな分野で今までやったことがないことを、と考えています。たくさんあるけど、ひとつは、僕らは「リアル脱出ゲーム」というフォーマットを育ててきたんですね。いろんな形・テーマで脱出するための箱と謎を作ってきた。でもそこで動くキャラクターであったり、そこにあるソフトはお客さんだと思っていたので、まったく育てなかったんです。
でもそこにお客さん代表みたいなキャラクターがいてもいいのかもしれない。お客さんの中で起こったことをきちんとドラマ化していくとか。起こった物語を抜き出して提示するような、ソフトを作れないか。たとえば、「リアル脱出ゲーム」から作る映画、ドラマ、漫画が作れないかなと思っています。
星野:
「物語に入りたい」という願望がこのビジネスのイノベーションを作ったと思うんですけど、「脱出」であるという必然性はあったんですか。脱出じゃない物語もいっぱいあったわけですよね。
加藤:
ひとつは制限時間があるということと、脱出ということと相性がいい。時々制限時間のないゲームも作るんですけど、それは脱出とはつけないですね。「何々を救え」「何々を探せ」とか、犯人を見つけ出したり。制限時間があるのはゲーム上では緊張感が迫りますし、ビジネス上も都合がいい。それを物語上で表現するには、「脱出」という言葉が非常に優秀なんですよね。物語ということでいえば、脱出以外のこともやっていきたいけど、ひとつ、制限時間があることなので、脱出がはまったということです。
星野:
このゲームは意外に人生にどんどん近づいて行く気がしていて。いろいろ考えていくと生きているリアルなしがらみから脱出したくなってくる、っていうね。いや、時間に制限がなければいろいろ面白いことができるんじゃないかな。
加藤:
リゾートの中にも物語はいろいろありますしね。
星野:
アガサ・クリスティなんかはリゾートで事件が起こりますね。
加藤:
そんな物騒なものを作らせていただけるんですか(笑)。でも一緒に考えられるといいですね。今日はすごく楽しかったです。星野さんのようにいろいろ教えてもらえる年上の人に出会えてありがたいです。
星野:
我々のビジネスが結果的にその地域の人たちや魅力や楽しみにつながれば面白いですね。こちらこそ、ありがとうございました。またお会いしましょう。

想像よりもずっとエキサイティングだった「リアル脱出ゲーム」次回はぜったい脱出成功したい想像よりもずっとエキサイティングだった「リアル脱出ゲーム」次回はぜったい脱出成功したい

構成: 森 綾
撮影: 萩庭桂太