Vol.3バイオ燃料と2025年計画、
さらに星野リゾートとの未来旅も?

星野:
今回のユーグレナ探訪は、せきねさんのジレンマ発言から始まったんだけど、ミドリムシがカーボンニュートラルな油を生み出して、それが世界の気候変動対策に深く関わっていくというようなことを知らない人が多いですよね。例えば、カーボンニュートラルな旅、我々はもう海水の淡水化装置、電機は太陽光で、ゴミもゼロエミッションでと、軽井沢から始まった水力発電や温泉の地熱利用などはすでにやってます。
それに、ミドリムシを原料に含むバイオ燃料稼働が諸々できれば、これはもう世界的に見てもモデルケース。ミクロなレベルで達成できれば、広めていけばいいわけですからね。そういう旅をしませんかという告知から始めれば、ものすごく面白いなと。
出雲:
そういう旅ってできるんですけど、そういう旅しませんかと言って、「行きたい、行きたい」という人は結構いるんですか?
せきね:
います。世界にはたくさんいますよ。
星野:
世界を見るとたくさんいます。日本を見たらまだまだですけど。
せきね:
旅慣れている方というのは、世界中に頻繁に飛んで、地球温暖化による明らかな気候変動現象も目の当たりにしているはずですから、自然を愛するトラベラー達は、サステナブルな旅を一刻も早く実現したいと考えている、絶対!
星野:
せきねさんと同じように、ジレンマを感じながら旅している人は多いです。
出雲:
はい。
星野:
そこで、昨日ちょっとご提案したんですけど、そういう未来を感じることができるというのは、一つ、旅の中のアクティビティの一つですよと。未来の社会を感じる。だから昨日ちょっとお邪魔させていただいた、ユーグレナ社の生産技術研究所とか、それから竹富にあるクルマエビの養殖場とか、確かにがっちり秘密は守んないといけないんだけど、何か未来を感じさせる…。

竹富島は農地・川がなく農薬や赤土の流入がないことで、日本一きれいな海水で育つというクルマエビ。

出雲:
もしくは感じるようにするということですよね。
星野:
感じるようにする。だからユーグレナさんはほら、フェリーのターミナルに「ユーグレナ石垣港離島ターミナル」と名前を付けたり、いろいろ石垣の中で溶け込むための策も練っていらっしゃいますけど、私はやっぱり根本は、石垣市民もそうだけど、世界から石垣に旅する人たちにね、ユーグレナ社の生産技術研究所をちょっと差支えない範囲のところを体験してもらって、未来に希望を持てる、そういう何かこう、見学コースができたりするといいんですけどね。
出雲:
例えばそんな見学コースを作っても、「私らは素人なので、別にミドリムシの工場なんか見に行かないよ」と言って、誰も見にきてくれなかったら、やっぱりさすがに悲しいじゃないですか。で、何か来てくれるのかどうかがよく分からなくて、本当にやっていいかどうかがまだ分からないですよ。
星野:
確実にいますよね。
せきね:
例えば、これからは高齢化社会ですし、人の健康を‘キーワード’にすれば間違いないでしょう。アンチエイジングの基礎化粧品だって、元気な高齢女性は興味津々のはず。「星のや 竹富島」の今回特別にご準備いただいたウエルカムドリンクでいただいたユーグレナのノンアルコール・カクテルが美味しくて驚きました。健康をコンセプトにしたホテル滞在こそ、世界中で今後の大きな課題ですよ。
星野:
一番ユーグレナ社にとってはインパクトのある体験を、旅の一部として提供できると、会社にとってプラスだと思います。最大の広報。
出雲:
場所もありますしね…。
星野:
実際に観光と産業が結びついて成長したというのは、例えばフランスのワインなんかそうなんですよ。フランスは世界最大のインバウンド大国ですから。新型コロナウイルス感染症前は、年間、人口6,700万人なのに8,900万人集客しているんですよ、あそこは。それで必ず、パリだけじゃなくて、ボルドーとかブルゴーニュとかってところも、くたくたになるような行程で行かせて、行った先でワインを飲むから、はっきり言って、どんなワインでもおいしく感じるような状態で飲ませるんですよ。〔笑声〕そうするとやっぱり、自分が行ったことがある造り手もみて飲むと、どんな人がどんなふうに作っているかわかってブランドも覚えるし。自国に帰っても買い続けるし。

「観光の有り方はただその場を訪れるだけではなく、伝統や文化に親しんでもらい、人の意識を変えることも大切」と語る星野氏。

 
観光っていうのはただ人に来てもらってお金を落として帰ってもらうだけではなくて、人の意識を変えるのも観光の役割なんですよ。もうちょっと観光と連携することによって、石垣に来た人たちみんながユーグレナのことを知って帰る。これが実は、個人的にはフェリーのターミナルに名前を付けるよりもはるかにでかい広報効果になるんじゃないかと。
出雲:
なるほど。

バイオ燃料を製造する
商業プラント建設の計画に迫る

星野:
出雲さんのビジョンを達成するためには、今のバイオ燃料の製造量を何倍にするとおっしゃっていましたっけ?
出雲:
2,000倍にします。
星野:
2,000倍ですよ、2,000倍。2025年にそのビジョン達成を目指しているんですよね。2025年といったらあと4年後だから、万博の年。世界から人が大阪に飛んでくる。万博の年にもう2,000倍にしようというのは、実現可能なんですか?

バイオ燃料を作り出すために「バイオ燃料を製造する商業プラントを建設の計画」が進行中という出雲氏に興味の尽きない星野氏。

出雲:
やりますよ。
星野:
すごいですね。それがすごいと思って。2,000倍だよ。じゃあ2025年までに先日見学したバイオ燃料製造実証プラントと同じものを大きくするんですか?
出雲:
今ある同じものを多くしたり大きさを変えるのは誰でもできるじゃないですか。非連続性の成長やイノベーションを起こす必要があるんです。
星野:
もうアイデアはあるわけですね。アイデアがあって、それはまだ言えずに。

グローバルな視野で稼働を始めることになる「バイオ燃料の商業プラント」。対談の当事者両氏だけでなく、同行者全員が大きな期待を抱きつつ対談終了へ。

せきね:
やっぱり、やりますとおっしゃっているからには、もう出雲さんの頭の中にはしっかりと、成功が見えているんですね。
出雲:
はい、もう全部できています。ただ、新型コロナウイルス感染症のせいで私が現場に行けないんですよ。
星野:
2025年にもうビジョン達成に向かって進んでいると。
出雲:
エコツーリズムも完成させますし、その時はまずは石垣・竹富でできたらいいなと思います。その次がバングラデシュですよ。ぜひ見にきてください。やります。
星野:
ありがとうございます。

編集後記・対談を終えて

「ユーグレナとは何ぞや」で始まったはずの対談は、観光・宿泊業界を牽引する星野氏と、話題のユーグレナ社の社長である出雲氏という両氏の取り組みは、厳しさや努力の中にも、まさに真摯で夢のある、ユーモアに富んだ人柄が見え隠れし興味深いものとなりました。両者ともに目指すは環境負荷の限りなく少ない地球環境、さらに未来の旅と宿の姿、そしてもちろん、健康なライフスタイルです。
世界を見据えた企業人の、ビジネスとプライベートの狭間での対談では、言葉の裏側に多くの可能性を感じることができました。
そして、この3日間で両名の柔軟な思考、俊敏な対応と実行力が透けて見え、こうした発信力に触れた先導者がいてくれる限り、近い将来、日本が観光国+環境国へ、そして世界をリードするバイオ燃料先進国へと変わる未来に希望が持てました。同行した私たちも、これでムシではない‘ユーグレナ’をより理解するスタート台に立てた気がします。

対談を終え緑に包まれるヴィラの庭で緊張のほぐれた様子の3名(右から星野氏、せきね、出雲氏)。

2021年11月 
ホテルジャーナリスト せきねきょうこ