かねだ流!展望タワーの楽しみ方
- 星野:
- かねださんは理想の展望室に必要なものはなんだと思われますか?
- かねだ:
- 私が展望室にのぼって一番大事にしているのが、着いた瞬間のファーストビューなんです。
知られざるタワーの魅力を存分に語ってくれたかねださん
- 星野:
- 着いた瞬間の景色は、旅館でも大事ですね。
- かねだ:
- エレベーターが開いた瞬間にぱああーーっと窓が広がっていて、その街の景色が一望できたときに一番テンションが上がります。逆に、エレベーターが開いたところがただの壁だったら、ワクワク感が削がれてがっくりしてしまいますね。
- 星野:
- エレベーターが開いた瞬間から、景色を見せる設計が大事、ということですね。そのあとはどんなふうに展望タワーを楽しむんですか?
- かねだ:
- エレベーターを降りて、展望フロアをぐるっと一周して景色を見渡し、ここから何が見えているのか、この展望室で何を見てほしいのかがわかるパネルを確認します。なるほど、なるほどって。
- 星野:
- あのパネルは必要なんですね。それから?
- かねだ:
- そのときに自分が気に入った景色を写真に納めさせていただいて。見下ろした街の中に自分がいるような妄想をして、満足したら帰ります。
- 星野:
- 特にお土産のグッズは買わないですか?
- かねだ:
- タワーの外観やそのタワーから見える景色が映ったポストカードやクリアファイルを買うことはあります。そこには、これが一番きれいでしょ? ってアピールしたい姿が映されていると思うので。展示室のパネルもそうですが、タワーを運営する人たちのそういう「想い」に触れると嬉しくなっちゃうんです。
マジックアワーに悪天候、初日の出。
タワーののぼり時
- 星野:
- タワーにのぼる、おすすめの時間帯はありますか?
- かねだ:
- 日没前のマジックアワーにタワーにのぼるのが、私は一番好きですね。陽が落ちる前に展望室に行くと、まず昼間の明るい街の景色、次に夕暮れ時の太陽が沈む瞬間、そして陽が落ちてからの夜景、と3つの景色を一度に楽しむことができるんです。
- 星野:
- なるほど!悪天候を楽しむというのはどうでしょうか。
まだ世界のタワーの世界には足を踏み入れていないというかねださん。星野のおすすめは、アメリカで二番目の高さを誇るシカゴの超高層ビル「ウィルス・タワー」だとか
- かねだ:
- 私は悪天候の日によく東京タワーにのぼっています。雨粒が打ち付けられた窓から見る歪んだ景色もエモいんですよ。それに雨の日は雲の動きが早くて、遠くで鳴っている雷をダイレクトに感じることもできます。
- 星野:
- 雲から雷の光が落ちていくのが見えたり。
- かねだ:
- 悪天候の日に遠くから眺めていると、東京タワーに光が吸い寄せられているように見えることがあって。高い位置にあるので年に数回は雷が落ちることもあるみたいなんですが、避雷針があるので、落ちても中にいたとしても気づかないくらいみたいです。
- 星野:
- 悪天候の日にタワーにのぼる、さらには遠くから眺める、という楽しみ方のバリエーションもあるわけですね。
- かねだ:
- はい。私は悪天候もワクワクしますね。
- 星野:
- かねださんは東京タワーの近くにお住まいなんですもんね。
- かねだ:
- そうなんです。東京タワーの近くにいたいがために茨城から引越しをしまして。2014年から毎年元旦に東京タワーに行って、初日の出を拝んだりしています。日本全国、初日の出営業をしているタワーも多いので、元旦にのぼるのもおすすめです。
100%同じ景色はない。
自然現象がつくりだす一期一会
- 星野:
- この季節はここへ! というおすすめはありますか?
- かねだ:
- 春に訪れて感動したのは、「さっぽろテレビ塔」です。春は夕暮れ時、見える世界がピンク色なんです。札幌は冬のイメージで、春が美しいとは思っていなかったのでギャップも含めて驚きました。とはいえ、夏は大通公園の鮮やかな緑が、秋は黄金色の札幌の街並みが、冬は白銀の世界が……とどの季節もそれぞれによさがあります。
本州よりも緯度の高い札幌では、5月ともなると19時過ぎまで空は明るいまま。夕景と街の明かりが灯るピンク色の景色
- 星野:
- つまり、それぞれの場所に、季節ごとのよさがあると。
- かねだ:
- 私は何度も同じタワーにのぼっていますが、季節や天候、時間帯、時の流れによっても見える景色は変わってきます。100%同じ景色であることはないんですね。空の色や木々の色、光の差し込み方、都会であれば街並みが変化することもある。それこそ悪天候のときも、そのときにしか見られない景色があります。
- 星野:
- わかります!私は日本全国、海外も含めていろんなスキー場に行っているんですが、時期や場所、気温によっても景色は変わって、それぞれのスキー場がそれぞれの最高の場面を冬の中で見せてくれるんですよね。だから、一番は選べない。
- かねだ:
- タワーもまったく同じです。その時々に見せてくれる景色が違うので、一番は決められません。
先日、星野リゾート トマムに泊まらせていただいて、リニューアルした「雲海テラス」にも行かせていただきました。
- 星野:
- 雲海もまさに、毎日見られるものではないし、季節や天候によって違う表情を見せる一期一会の景色です。
2021年8月リニューアルオープンした「雲海テラス」
- かねだ:
- そうなんです。雲海テラスに着いたときは雲の中で、雲海は見られなかったんですが、デッキに戻るタイミングで一気に雲のカーテンが開いて、日の出を見ることができて、とても感動しました。1日の幕開けをあんなにも身体で感じたのは初めての体験でした。
- 星野:
- 自然現象がつくりだすものは本当にすばらしいですよね。だから私たちも、時間帯や天候によって刻一刻と変化する雲海の表情を楽しんでもらえるように、雲海テラスに滞在する時間を増やす試みをいろいろしているんです。
- かねだ:
- 雲海テラスもまた行きたいですし、展望施設を増やすとお聞きしたので、すごく楽しみにしています。
タワー観光に食事、ホテルをセットに。
より街を知る楽しみを広げていく
- かねだ:
- こんなにタワーについて語れる機会はなかなかないので、今日はお話できてすごく嬉しかったです。
- 星野:
- こちらこそ。タワーへの愛情は、以前対談させていただいたさかなクンと似た雰囲気を感じます。ぜひ、がんばっていただきたい。YouTubeでの発信とかどうですか?
星野リゾート「OMO」のサングラスをつけて、決めポーズ
- かねだ:
- 10年以上撮りためてきたタワーの写真もたくさんあるので、発信にはもっと力をいれていきたいですね。あとは、タワー観光だけだとハードルが高いと思うので、ひとつの付加価値として、タワー周辺の食事やタワーが見えるホテルなども紹介できたらいいのかなと。
- 星野:
- それはいい考えですね。合わせて観光を提案できれば、よりタワーを楽しむ人が増えそうです。応援しています。ホテルとタワーをぜひ一緒に盛り上げていきましょう。
構成: 徳 瑠里香
撮影: マツダナオキ