Vol.2魚が好きを極めて仕事に。

星野:
魚が好きだと自覚されたきっかけを覚えていますか?
さかなクン:
はい! 小学2年生の時、クラスメイトの男の子が描いたタコの絵を見た瞬間ですね! ノートから飛び出てくるような、ものすっギョい勢いのタコを見て「こんな生き物がいるんだ! これは是非実物を見てみたい」と思いました。放課後、すぐに図書室に行って図鑑で調べたんです。
星野:
おぉ、すぐに!
さかなクン:
はい。そこでタコという名前を知って、しかも魚屋さんにいるというもわかったので、その足で図書室を出て魚屋さんに行きました。
星野:
やっぱりすごいなあ。その友達の絵が一つのターニングポイントになったんですね。僕は長野県の出身で、長野には「野鳥の森」という場所があるんです。鳥も魚と同じで、すごく多様ですが、魚以外の生き物には詳しいですか?
さかなクン:
ギョめんなさい! 鳥はちょっと…。お魚の天敵なので、ギョかんべん。
星野:
確かに(笑)。うーん、でもその魚に対する興味はすごいですね。僕は、「国設軽井沢 野鳥の森」の近くには住んでいましたけど、野鳥にそこまで興味が持てなかったんですよ。大抵の子供はそうだと思います。子供の頃と同じくらい強い関心を今も魚に抱き続けているんですか?
さかなクン:
はい! 関心は年々高まっています。お魚について調べれば調べるほど、面白いことやわからないことが増えていくんですね。
星野:
ご家族の方の理解もあったんでしょうね。
さかなクン:
はい! 今になって振り返れば、とても理解のある家族だったと思います。勉強そっちのけでお魚を観察したり、絵を描いたりしていたので、学校での成績はあまりよくなかったんですが、自由にさせてくれました。特に母は、家庭訪問で担任の先生に「もっと勉強させてください」言われたそうなのですが、「ウチの子はとにかく絵とお魚に夢中だから、それでいいんです」と言ってくれたみたいです。
星野:
すごい。すばらしいお母さんですね。

魚が好きを極めて仕事に。

さかなクン:
ちゃんとした絵の先生に指導してもらうことも勧められたそうなのですが、母は「子供が描きたいように描かせてあげたい」と応援してくれました。すギョく伸び伸びと泳がせていただきました。
星野:
(笑)。でも、とてもいい話ですね。親は普通、子供の能力をバランスよく伸ばそうとしますから。ちょっとバランスが悪くてもいいと言い切れるのはすごいことです。お母さんの考えのおかげで、さかなクンはお魚に集中してその才能を伸ばしたわけなんですね。
さかなクン:
はい! そういった育ち方をしたこともあって、小さいころから、お魚とかかわる仕事につきたいと思っていたんですが、どの仕事を選べばいいのかわからなかったんです。とにかく片端からお魚に関するお仕事を学んでみよう!と、最初は、専門学校時代に水族館の飼育員の実習を、その次は寿司屋さんで働きました。
星野:
その格好で寿司屋をやっていたら、お客さんもいっぱいくるでしょう(笑)。
さかなクン:
ところが、職人にも向き不向きがあって・・・、すギョく丁寧に教えてもらったんですが、全くシャリが握れませんでした。「こんなに向いてない子もいるんだなぁ~」って大将に言われたくらいで。
星野:
ははは(笑)
さかなクン:
でも、そこの寿司屋さんの大将が素晴らしい方でお店の外壁に好きなだけお魚の絵を描いていいよ!と画材も揃えて時給までくださったんです。
星野:
へえ~。そのお寿司屋さんは今も残ってるんですか?
さかなクン:
十数年前にお店を畳んでしまいわれました。今はおすしの学校(東京すしアカデミー)の主任講師をされています。次はスーパーの鮮魚コーナーに行きまして。
星野:
寿司はダメだったからですか(笑)
さかなクン:
でも商品陳列や機械を使った清掃などが中々難しくて…。お魚のパッキングは得意だったんですが。それに、これはお寿司屋さんで働いてるときにも思ったことなのですが、扱われるお魚が大体種類が決まっているんです。
星野:
確かにそうですね。
さかなクン:
お魚屋さんで扱われるお魚は、およそ30種くらいです。でも、日本には4200種以上のお魚がいるわけで、自分はもっと色んなお魚を見て調べて描きたかったのです。
それで、今度は熱帯魚屋さん学んでみようと、働いてみました。
星野:
なるほど。色んなお魚に会えますよね。
さかなクン:
世界中の様々なお魚に出会えるのですが、商売なので、1匹1匹次々と別れてしまうのが辛かったですね。熱帯魚って、水槽に入ったばかりの頃は傷があったり、状態が悪い時もあるので、一生懸命ケアするんです。ケアして、お魚が元気になっていくのを見るのはとても嬉しいのですが、元気になった途端、すぐ売れてしまいます。
一匹買われていくごとに、頭の中でドナドナが流れて…。
星野:
それは商売的には嬉しいけど、さかなクン的には悲しいですね(苦笑)。

構成: 森 綾
写真: 萩庭桂太