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星野リゾートを支える人たちの手しごと VOLUME 13 界 日光 日光下駄職人 山本政史さん星野リゾートを支える人たちの手しごと VOLUME 13 界 日光 日光下駄職人 山本政史さん

旅の魅力はその地域にあり
星野リゾートの施設の「個性」を担うのは、その土地を象徴するプロフェッショナル、職人さんや生産者さんの存在です。
彼らの仕事や目指すもの、発信力に着目し、日本各地の未知なる旅へとアプローチします。
文・さとうあきこ

伝統技術が育む草履の進化形 「日光下駄」の魅力と新しさ
伝統技術が育む草履の進化形 「日光下駄」の魅力と新しさ

山本政史さん

栃木県日光(旧今市)市生まれ。独立自営の道を目指し様々な勉強をしていた30代後半、後継者不足に直面した「日光下駄」のことを知り、後継者育成事業に参加。その講師であった「日光下駄」唯一の職人・山岡和三郎さんに基礎から作り方を学び、その後独立。平成6年より「日光木彫りの里工芸センター」にて実演販売を始め、伝統的な日光下駄を基本に、独自の工夫を重ねた製品を作り、多様なニーズにも応えている。栃木県認定の伝統工芸士。

    

東照宮参拝のために
生まれた履物

外国人旅行者も多く訪れる日光の中心、日光東照宮は、江戸幕府初代将軍・徳川家康の霊廟として信仰を集め、関東武士に崇敬された神社。江戸時代、格式を重んじた社寺への境内参入には、厳しい制限やしきたりがあり、履物には「草履」を使用するのが原則でした。ところが、日光東照宮をはじめ、日光の社寺は石や坂道、雪も多く、草履で歩くには不便なため、草履の下に下駄の台木を縫い合わせた「御免下駄」が考案されました。大名をはじめ、神官や僧侶の正式な履物として用いられましたが、明治になると、より履きやすい改良型が作られ、一般庶民にも愛用される「日光下駄」が生まれました。

草履は上質な真竹の皮で
編みあげる

日光下駄は、その成り立ちからもわかるように、「下駄ではなく、あくまでも草履」と話す伝統工芸士の山本政史さん。要となる草履作りは、真竹(主にシロ竹、カシロ竹)の皮を3日ほど硫黄でいぶすことから始まります。いぶした竹皮を7mm~1cmほどに裂いたものを横糸とし、縦糸には麻ひもを使い、一足あたり400本以上の真竹を一本一本編み上げていきます。「竹皮はいぶすことで繊維が丈夫になり、仕上がりの色も白く美しい」と手間を惜しまない山本さん。太い鼻緒も特長で、叩いて柔らかくしたもち米の藁を詰めています。その鼻緒は、草履を編む時に一緒に編みこみ、結び目を草履裏に隠して下駄部分に縫い付けるので、台木に見える鼻緒の穴は1ヶ所だけ。これも普通の下駄の作りとは違う点です。

一生ものになる
履き心地を求めて

「日光下駄」が長く親しまれてきたのは、なんといってもその履き心地。山本さんが作る草履は、足の裏が当たる部分には吸湿性の高い表皮だけを使い、編み方も、踵部分を盛り上げるなど場所によって変えています。素足はもちろん、足袋でも足裏の当たりが柔らかで滑りにくい。特に夏はさらっと肌触りが快適で、「履けば履くほど足に馴染んできます」と山本さん。下駄部分の台木は、信頼する木工屋から仕入れる、軽くて柔らかな桐製品を使用。日光下駄の原型「御免下駄」から改良された「千両型」と呼ばれる台木は、歯の前部が八の字型に広がっているのが特徴で、安定性があり、雪もつきにくい形状です。

日常に履きたくなる日光下駄へ

近年の「日光下駄」は、「千両型」をさらに履きやすくした「右近型」が主流です。これは、山本さんが「今の暮らしに合った日光下駄」をと、自ら改良したもの。高さを抑え地面と接する面積を増やし、底にはゴムを張ったので、滑りにくく歩きやすい。現代人の足裏にフィットする形状なので、普段履き、サンダルとしてもおすすめです。鼻緒には、地元の真岡(もうか)木綿を使った色や柄を多数そろえ、要望があれば、草履の竹皮も色鮮やかに染めるなど、アレンジにも工夫を凝らしています。「日光下駄」の可能性を広げるには、見た目の魅力も大事と、お客さんのアイデアや要望にも真摯に耳を傾ける山本さん。「履いてみたいという人に合わせて作るのも職人の仕事。毎日いろいろ違うことを考え作業しているので、ひとつとして同じにはならないのもおもしろいところです」。

日光下駄ができるまで

私の愛用品

手に馴染む特注の「鋏」

竹の皮や麻ひも、藁といった自然素材のものであふれている山本さんの仕事場で、鈍く光る鋏が目を引きます。「自分の手に合った使いやすいものが欲しくて、知り合いの鍛冶屋に作ってもらいました。もう20年ほどになりますが、刃持ちや切れ味良く、重さもほどよく使いやすい」。同じ栃木の伝統工芸士による鋏は、使い込まれた刃がねも美しい。職人仕事への信頼も厚く、年に一度は研ぎに出し大切に使われています。

界 日光で楽しむ
日光下駄

「界」では「ご当地楽(ごとうちがく)」と呼ばれる、 地域を感じるスペシャルサービスを毎日ご用意しています。「界 日光」では400年の歴史を刻む伝統工芸「日光下駄」を使ったおもてなしをご用意。 日光下駄の成り立ちや魅力をストーリー仕立てでご紹介し、日光の知られざる奥深い魅力をお伝えいたします。 滞在を通して「現代の日光詣」をお楽しみください。

日光下駄談義

界 日光では「日光下駄」を使った魅力をご用意しています。会場にいるお客様にもご参加いただき、迫力ある下駄のタップダンスとともに、「日光下駄」の成り立ちや魅力をストーリー仕立てでご紹介。会場にある日光下駄を履いてぜひご参加くださいませ。

日光下駄で散策

ご滞在中、日光下駄はご自由にご利用いただけます。日光下駄を履いて、華厳の滝(徒歩10分)、中禅寺湖、お土産屋巡りなど、日光下駄を履いてのそぞろ歩きは界 日光ならではの体験です。

界 日光

奥日光の入り口に位置し、中禅寺湖のほとりに佇む温泉旅館。雄大な自然に囲まれ、3000坪にわずか33室の贅を尽くした造り。栃木ならではの趣向を凝らした日本会席、重厚な檜の湯船や岩組の露天風呂、伝統工芸「日光下駄」との出会いなど、日常から解き放たれる特別な空間です。

https://kai-ryokan.jp/nikko/